CHAPTER 02

AI Agentの基本

生成AIとの違いと、Cortex Agentが回答を作る仕組み

2-1. 生成AIとAI Agentは何が違うのか

生成AIは、入力された質問や指示に対して文章・要約・コードなどを生成することを得意とします。 一方のAI Agentは、質問に答えるだけではなく、目的を達成するために 「何を調べるか」「どのツールを使うか」「結果を見て次に何をするか」 を判断しながら処理を進めます。

観点 生成AI AI Agent
主な役割 回答・文章・コードなどを生成する 目的達成に必要な処理を組み立てる
ツール利用 必須ではない 必要に応じてデータ分析・検索・処理などのツールを使う
処理の流れ 入力 → 生成 理解 → 計画 → ツール実行 → 評価 → 回答
複数ステップ処理 限定的 複数の処理を連続して実行できる

2-2. Cortex Agentとは

Cortex Agentsは、Snowflakeの管理された環境内でAI Agentを構築・実行するための エージェント基盤です。

Agentは利用者の依頼を理解し、必要なツールを選び、処理結果を評価しながら 最終回答を生成します。構造化データにはCortex Analyst、 非構造化データにはCortex Searchを利用できます。

flowchart TD U[利用者の質問] A[Cortex Agent] P[計画] T[ツール選択] R[結果確認] F[最終回答] U --> A A --> P P --> T T --> R R -->|十分| F R -->|追加調査が必要| P

2-3. Agentが回答を作る基本サイクル

Cortex Agentの考え方を初心者向けに分解すると、次の4段階で理解できます。

① 理解・計画

利用者が何を知りたいのかを判断し、必要な作業を組み立てます。

② ツール利用

Cortex Analyst、Cortex Searchなど、目的に合うツールを呼び出します。

③ 結果の評価

取得した結果で十分か、追加分析が必要かを判断します。

④ 回答生成

必要な分析が終わったら、利用者が理解しやすい形にまとめて回答します。

2-4. Cortex Agentが利用できる代表的なツール

Agentは、質問内容に応じて複数のツールを使い分けます。

ツール 主な役割 利用例
Cortex Analyst 構造化データを自然言語で分析 「先月の商品別売上を教えて」
Cortex Search 文書・FAQ・ナレッジを検索 「返品規程を教えて」
Code Execution Pythonを使った計算・加工 複雑な統計計算や結果の加工
Data to Chart 取得したデータを可視化 売上推移をグラフ化
Custom Tools UDF・Stored Procedureなど独自処理を実行 社内固有の業務ロジックを呼び出す
MCP Connector 外部アプリや外部ツールと連携 Jira、Salesforce、その他MCP対応システムとの連携
Web Search 公開Web情報を検索 市場情報や外部ニュースの確認

2-5. 具体例:売上減少の理由を調べる

「今年7月の売上が前年同月より落ちた理由を教えて」

この質問に対して、Agentは単純に1回SQLを実行して終わるとは限りません。 例えば次のように段階的に調べることができます。

flowchart TD Q[売上が落ちた理由を教えて] A[Cortex Agent] B[全体売上の前年比較] C[商品別に確認] D[地域別に確認] E[顧客別に確認] F[関連文書や施策情報を検索] G[原因を整理] H[回答] Q --> A A --> B B --> C C --> D D --> E E --> F F --> G G --> H

回答イメージ

7月売上は前年同月比で8.4%減少しています。 主因は商品Aの販売数量減少で、特に関東地区の主要3顧客で減少幅が大きくなっています。 関連する営業記録では、6月以降に競合商品の提案が増えていることも確認できます。

2-6. 「ツールを持たないAgent」は何ができるのか

Cortex Agentは、ツールを設定しなくてもLLMとの会話自体は可能です。 ただし、その場合はSnowflakeアカウント内の業務データを分析できません。

flowchart LR A[Agent] B[ツールなし] C[一般知識ベースの会話] D[Agent] E[ツールあり] F[企業データを利用した回答] A --> B --> C D --> E --> F

企業利用では、Agentそのものより「どのツールを、どのデータに、どの権限で接続するか」 が重要な設計ポイントになります。

2-7. Agentの精度を左右する4つの要素

AI Agentだから自動的に正しい答えが出るわけではありません。 回答品質は、主に以下の4要素に依存します。

データ品質

元データが誤っていれば、AIの回答も正しくなりません。

Semantic Layer

売上・利益・顧客などの意味定義が曖昧だと、分析結果がぶれます。

Tool設計

どの質問をどのツールに任せるかが重要です。

Instructions

Agentに与える指示や判断ルールによって回答の一貫性が変わります。

第10章では、この4要素を含めたAI回答精度向上テクニックを詳しく扱います。

2-8. AI Agentに任せすぎない

Cortex Agentsの回答は、LLMを利用する以上、常に完全に正しいとは限りません。 特に経営数値、契約判断、重要な業務処理では、人による確認や検証プロセスを設計する必要があります。

重要: 「Agentが答えたから正しい」ではなく、 「正しいデータ・定義・権限・評価方法を用意し、回答を検証できる状態にする」 ことが企業利用では重要です。

この章で理解したこと

  • 生成AIとAI Agentは役割が異なる
  • Cortex Agentは計画・ツール利用・結果評価・回答生成を繰り返す
  • 構造化データはCortex Analyst、非構造化データはCortex Searchが基本
  • Agentは複数ツールを組み合わせて複雑な質問を処理できる
  • 回答精度にはデータ品質・Semantic Layer・Tool設計・Instructionsが重要

次章では、Snowflake CoWork、Cortex Agent、Cortex Analyst、Cortex Search、 Semantic Viewがどのようにつながるのかを、全体アーキテクチャとして整理します。

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